マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫)

大量の積ん読となっている技術書から一時逃避して、読み終えた。
結構直球なハードSFだった。ワープ航法などを仮定しない太陽系とその周辺宙域で展開される、一連の短編数本で構成されている。
ワープを仮定しないので、当然光速の壁やら加速度が移動を大きく制約してくる。この話では高密度大質量の円盤を宇宙船に取り付けて、それからの距離に応じて生じる重力場を宇宙船自体の加速度を相殺させるというマッカンドルー航法というのが出てくる。確かにこの方法ならば、重力制御とかオーバーテクノロジーを用いなくともリーズナブルな主観時間で恒星間を移動できる。だけど、当然重い物を船に付けているのだから推進剤の消費が大変な事になるんじゃないかと。物語中では真空エネルギーを取り出す方法が開発されてこれを回避することになっているのだけど、前段までの物理学的にありそうな話から急に飛ぶので、「え?」という感じがした。
こういうSFを書く人は大抵説明好きで設定した時代背景やら組織なんかについて語りたくなることが多いと思うが、この著者はそうでもないようで、背景の説明が薄い。それなりに考えて設定されていそうだし、もう少し語ってもいいんじゃないかなぁ。