フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

タイトルの通りフェルマーの最終定理の証明にまつわる話。専門書ではなく、一般向けの啓蒙書だけあって難解な数学の問題についての内容だったが楽しく読めた。
啓蒙書だけあって、専門的な話はやや端へ置いて中心は古代ギリシャ時代からの数学の歴史を人間ドラマを交えつつ解説している。ところどころ証明を要する話も出てくるが、それらは巻末の補遺に収録されていた。難易度としては中学、高校レベルの数学を落第しない程度に学んでいれば論理を追いかけられる程度。
理系とは言え数学はほぼ素人の私だったが、フェルマーの最終定理が証明されたことに対する数学における意義とかドラマ性とかには少し感動し久しぶりに熱くなった。話を完全に理解するためには出てくる専門用語を理解しなければいけないのだろうけど、後半の最近の数学関連ではやはり解説は難しいのか簡単に概念に触れるだけで実例とかも挙げられなかったのが少し残念。特にモジュラー形式というのが全然具体的に説明されなくて、詳細を知りたくなった。
元々が17世紀に出された定理の証明なのでこの本を読む前はそれほど重要ではないと思っていたが、それに留まらずこの証明によって別々の数学の分野が統一される第一歩となることに意義があったらしい。
最後の章では今後の数学に残された問題についてだった。今後は数学も計算機による力技による証明が横行するよね、という悲観的な話。特に4色問題という地図を塗り分けるパターンについての問題が例として挙がっていた。この問題は、非常に多くのパターンに場合分けできるがそれぞれの個別のケースの証明は計算機がやってしまいましたよという話。私からすると数が多いとはいえ漏れなく条件分けできた段階で問題は解けたようなものなので、後段に計算機を使うことを卑下することは無いと思うのだけど。数学者からするといまひとつ納得しかねる物らしい。