サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

読了。事前に内容について警戒すべきであるという感想を耳にしていたが、これは凄いな。中学生や高校生ぐらいの捻じくれた過剰な自意識を持っていた自分を再認識させられるようで非常に恥かしい。
内容としては、SFというよりは青春物。作中ではやたらと他の小説や映画、マンガなどのメディアに言及されるのだけど、いずれもハードSFよりはややファンタジー寄りの作品が多い。本作自身もそちら寄り。全編主人公に一人称視点で語られる文章はかなりこっぱずかしいが、平易な内容なのでサクサク読んでいける。
ジャンルとしては恐らくライトノベルに分類されるであろう内容なので、古くからのSF読みからは少なからず反発はあったと思われるが、本作は2006年の星雲賞受賞作でもある。私はSFファンダムに関連する活動に関与したことはないけど、そういうコミュニティの人口分布も徐々にかわってきたということかな。
ここのところ読んでいたのが古い作品や時代設定が現代ではない作品が多かったので、本作中でとりあげられているような時事ネタが頻繁に出てくるのが新鮮だった。時代小説やSFとかでもない限りこちらの方が自然なんだろうけど、10年もすれば内容が陳腐化してしまうのではないだろうか。現代小説って案外寿命が短かいのかもしれない。
自転車についての描写がところどころ出てくるのだけど、なんだかその記述が変。自転車競技への描写や自転車のメカニックに対しての記述でこの人はあまり実際には乗らない人なのではないかな?と思える箇所が数点あった。非常に多く本を読まれる作家の人らしいので本での知識をベースに書いたのか、単なる床の間レーサーなのか。
やはり賛否が分れているらしいが、続刊でオチがつくらしいのでとり急ぎそちらを読むか。