IPv6からインターネットのアーキテクチャ話

JANOGでのちょっとアレな人が退いてからは、ちゃんと建設的な方向に話が進んでいって良かった。
IPv4の延命策のみに焦点を当てれば私にでも思いつきそうな案は数手ある。一時冗談であった「中国のインターネットは全部プライベートIPアドレスで構成されていて、対外線の口だけグローバルIPアドレスが振られている」とかいうのの拡張とか、ルーティング情報を更に一段階階層化して国際経路と国内経路をコミュニティなんかで完全に分離してしまう、とか。
前者の案ならばルーティング情報の増大はもちろん空間の問題も解消しちゃう。後者にしたって実は現在頑張ってフルルートを受けているルータのほとんどは、そんなに最適なルーティングに寄与しているとは思えない。それならば、バッサリ経路を絞って届かない所はデフォルトルーティングにしちゃえばいい。いずれの案もようは一つのレイヤで解決不可能なら、一層増やせばいいんじゃないのという提案。
コストがそれほどかからなくて、今の問題に対応できるなら直ぐにでもやれよと言われそうだけど、私は安易にそういう施策を導入するのは反対。現在のインターネットのアーキテクチャはやや誇張はあるにせよ、フラットな構造をしている。もちろんTier1とTier2の間でルーティング情報における格差があったりするのだけど、それにしたって、国の許認可の結果そうなったわけでもないし、Tier2が力を付けてのし上ったりその逆にTier1から転落しつつあるような現状もある。ゆるやかなコンセンサスと統一的なアーキテクチャがなせる技だと思う。
上記のような案はそういったゆるさに楔を打ち込んでしまうと考えている。アドレス空間の階層化を行うとすれば自ずとその上位空間のアドレスを持つ者と持たざる者を峻別するだろうし、恐らくそれは規模の大きな団体にしか手の届かない物になるはず。ここで「国の監視が!」とか「我々の自由が侵されている!」とかアジるつもりはなくて、単に将来のイノベーションへの可能性を狭めることなるんじゃないかと思っているだけ。
過去に大きな会社で働いていた人間が言うのもナンだけど、テレコム業界に限らず一定以上大きな会社にイノベーションを起こすことは無理だと思っていて、小さな会社に挑戦する機会を残しておくべきではないかと。そうやって技術的、マーケット的な挑戦できる余地を作っておけば将来凄いアイディアをベースにサイコロを振る会社が出てきたときに、世界中をもう一回ひっくり返すことだって出来るかもしれない。それで世界中がハッピーになれる方がいいに決まっているじゃないですか。
IPv6の策定直後に出た本でも「いろいろ変えちゃったけど、これで当面のヘッドスペースを確保できたと思うよ」みたいな話が載っていた。これを聞いてエンジニアとして「じゃあ何を作ってやろう」とならないのはもう正直ダメだと思う。ファイアウォールのルールを書きながら世の中が53と80と443ポートだけありゃいいのに、とか本気で言っちゃう人に通じる絶望的な想像力の無さを感じる。
と、まぁ、こんな経済合理性や一般人の理解から5光年ぐらい離れた事を語っちゃうからIPv6の関係者はキモがられちゃうんだよな。IPv6キモい、無くしちゃえ