ルータとL3SW
2chの入っているiDCがコアルータを交換したとかで、懐しい名前を見掛けたのでふと思い出したことを書いてみる。
ネットワークの世界ではLayer 3で中継する装置を一般的にルータと呼ぶのだけど、同じ機能を果すものでLayer 3 Switch(以下、L3SW)というのもある。ルータは機器の機能で、L3SWはその実装方法だろうというのが多分正解なんだけど、それにしてもルータとL3SWというが別の機器であると扱うことが多いように思う。しかもなんとなくSWの方が格下みたいな扱い。
何をもってL3SWと言うのかには、半ば冗談だが諸説ある。
パケットをハードウェアで処理するのがL3SW
かなり昔の定義。
ルータもエッジの小型ルータを除いて少し前からハードウェア処理が中心になっている。今はCPUが速くなってきて逆に簡単になったが、以前は100Mbpsをワイヤーレートで処理できるのはハードウェア処理をしている箱だけ、みたないな時代もあった。今でもGbpsを超えるクラスでソフトウェア処理というのはほとんど見ない。
スイッチメーカが作っているのがL3SW
ExtremeとかFoundry、Force-10みたいなSW専業メーカやその系統の製品をL3SWだとする説
じゃあCiscoは?って、ことになるがこの場合はCatOS系統を使うのをSW、IOSをルータと称する。でも最近はCatalystでもIOSが普通になってきたので、これも辛い
STPが動くのがL3SW
もともとがL2SWの発展して出来た製品なのでEthernet関連の機能は充実している。
VLANは比較的早い段階でルータでも使えるようになったけど、STPとかはルータではあまりサポートしないことが多いんじゃないかなという説。
POS系のインターフェースが付けられないのがL3SW
SWはSTM-16とかのPOSやシリアルなんかのインターフェースカードがオプションでも用意されていないことが多い。
専業メーカの作っている製品は本当にラインアップ上にもない。Ciscoとかはラインカードがルータと共用できる関係で付けられたりする。
Ethernetのストレートケーブルで接続するのがL3SW
ルータとホストを接続するときはクロスケーブルで接続する必要があるけど、L3SWはストレートで繋げる。
じゃあ個人宅で使うようなNAT箱はストレートで繋ぐのでL3SWなのか?とか疑問点はある*1ものの、それっぽくて個人的には好きな説。最近はクロスとストレートの自動認識や切り替え機能が結構高い装置にも入っているので、この辺も混沌としている。
なんとなくの違い
個人的に考えている違いをまとめると以下のようになる
ルータ | L3SW | |
CPU | リッチ | プア |
メモリ | 山盛り | 最低限 |
バックプレーン | ほどほど | 大容量 |
ポート密度 | 低い | 高い |
ポート単価 | 高い | 安い |
使えるルーティングプロトコル | 多彩 | 最低限 |
VLAN | 多くで使える | 必須 |
STP(802.11d) | 使えるのもある | 必須 |
Ethernet以外のI/F | 各種ある | ない |
QoS | 色々できる | 最低限 |
そもそもルータとSWの格差というか、ルータ信仰というのは日本特有のものらしい。CiscoのCisco 7600 Seriesはラインアップ上もルータとして扱われているが、実体はCiscoのL3SWのラインアップであるCatalyst 6500 seriesと同じもの。箱の表面に書いてあるロゴ以外、ソフトもハードも全く同一の製品であるにもかかわらず何故か価格がCisco 7600の方が高い。USのエンジニアに聞いたところでは本国ではそんな差別化はしていなくて同一価格だそうだ。それでも日本にはCisco 7600を指名買いする人が居るらしいので、不思議な話
最近のコアルータは仕組み上でL3SWの差はほとんど無いといってもいいぐらい。エンタープライズやiDCなんかで大きなトラフィックを処理することが重要な場合は、L3SWで十分に事足りる。ただ、ISPやキャリアのコアなんかではどうしてもL3SWでは代替出来ない部分がある。
*1:実際内部でL2SWが入っているものが多い