沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

読了。アシモフの古典SFから一転現代的な宇宙SF。
表題作を含む短編数編からなる宇宙物だけど、どれも最新の観測結果や技術の内容が反映されている秀作揃い。「宇宙研の火星往還」なんてフレーズだけで御飯三杯は行ける、あるいは目頭が熱くなる人間にとっては必読だろう。
クレギオンのシリーズもスケールがあって良かったけど、やはり現実と地続きの宇宙開発物は直接のリアリティを持って迫ってくる。あとは、「太陽の簒奪者」でも描写があったが疲弊していく地球と宇宙開発という対比というのが個人的にはグッときた。現実問題として、宇宙開発は予定よりも遅れるようなイベントが発生こそすれ前倒しというのが滅多に発生しない分野なので、実際の宇宙開発でもこういう焦燥感との闘いなんじゃないだろうか。