バビロニア・ウェーブ

バビロニア・ウェーブ

バビロニア・ウェーブ

書店で手に取って、煽り文句にヤラれた。「太陽から三光日の距離に銀河平面をほぼ垂直に貫く1200万kmのレーザによる定在波が発見されて、、、」。表紙の絵がまたそれっぽくて、即購入。実際には可視光じゃないんだけどね、というのは巻末の絵師の言葉にもあるが、非常に雰囲気が出ていてよい。
物語は定在波付近に設置された人類の発電基地へ向かう定期連絡船の中から始まる。太陽系の惑星群から隔絶した発電基地の閉鎖環境のなかで進行する話は、ミステリーやアドベンチャーゲームの状況設定にも思える。
件の定在波が発見されたおかけげ太陽系ではエネルギー問題が一挙に解決してしまい、あらゆる分野でエネルギーがジャブジャブ使えるという世の中になってしまう。初期の設定がトンデモないので、逆にそれ以外の設定では手堅く描かれている。エネルギーの利用を含めて使われる技術はほとんどが現行の技術の延長線上で特にオーバーテクノロジーも出てこない。
物語終盤では定在波の正体とそれによって新たな宇宙観が提示される。なんてご都合主義な宇宙だと思わなくもなかったが、最初の定在波のハッタリの大きさとそのエスカレーションした挙句の遠大な世界観は脱帽だった。
巻末の解説には執筆にあたって助言をした天文学者の人が書いているのだけど、最終的に「強い非線形効果か何かで自己収束し」というあまりにもな投げっぷりの解説に吹いてしまった。卒研のときにも非線形光学というのをやっていたが、なんか便利な単語でいいな「非線形効果」。これからは何か説明が難しい現象があったときにはカタコトの日本語で「ヒセンケイコウカカナニカダ」と釈明してみよう。