異星の客 (創元SF文庫)
- 作者: R.A.ハインライン,井上一夫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1969/02/24
- メディア: 文庫
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裏のあらすじを読んだときにはポリティカルな話で終始するのかと思いきや、後半から思わぬ方向へ話が転がっていくのでのけ反ってしまった。大きくわけて政治絡みのパート、価値観に関するパート、宗教に関するパートで構成されている。火星から来た男の視点を使って世の中を風刺というか戯画化して描いている。
柱の一つとして宗教話を持ってくるのはやはり欧米人らしいな。色々な宗教の話が出てきはするが、基本的にはキリスト教を想定した描写だし。
火星から来た男は地球の文明と対照的な場所に置くためにできるだけラディカルな事を考えているという設定にしてあるのだけど、やはり著者のマッチョな思想ところが見え隠れして案外現在からすると保守的な事を言っていたりするのが面白い。部分的には現代社会はSFを超えているところがあるのかもね。
あとは古典SFではよく見かける広告と商業主義にまみれたメディアの描写が気になった。ニュース番組の最中にも提供の企業の宣伝がしつこく入る様子を描いているような場面。古いSFほどよく見掛けるが、現代の日本では報道番組の司会者が企業のCMに出るようになっているのだから、ある意味SF並になってきているのかも。