インターネット封鎖の方法

エジプトのインターネット封鎖が意外と世間の注目を集めているので驚いた。過去に政変の発生した途上国では規模の差はあれど、幾度が見られた現象なので何故今になってという思いも若干ある。エジプトという比較的規模の大きい国家で実施され実際に影響範囲が広く、twitterのようなソーシャルメディアでの内情の流布がある状況だったのが原因だろうか。
ギズモードの記事によるとエジプト国内のISP全体に対する措置ではなく、対外接続を持った大手ISP数社への要請として実施されたようだ。しかし、影響範囲は甚大でほぼインターネット上からエジプトへ向かう経路が消失したと言える。
経路制御における経路広報と通信は方向が逆で、広報をするとそこへ流入するトラフィックが発生する。今回は経路の取り消し(WITHDRAWN)が発行されたらしいので、そこへ向かう通信が消えたことになる。ただし、IIJの松崎さんのtweetにもあるように学術系の一部の経路は残っていたようだ。
私が旧体制の担当者だとして、インターネットを遮断しろと命令されたらやはり同じ措置を思いつくだろう。
今回の措置に対する意図だが、内情を国外に流布されることを防止するのと海外からの反応を国民が受けとれないようにするための二面あると思う。幸か不幸か前者についてはあまり効を奏していると言えないようで、何かしらの経路を通じてtweetがされているようだ。
例えばこれが日本で実施されるとするとどうだろう。実施される状況や法的根拠を一切無視した上でできるかどうかというところだけを考えてみる。
日本国内にもISPは非常に多いが、実は国外との接続を直接持っているISPは少ない。大手キャリア系(net.net,KDDI,旧JT)の他は独立系(IIJなど)や外資系など恐らく10社をやや超える程度しか無いのではないだろうか。他のISPはこれらからトランジットを買っているだけで、直接海底ケーブルを借りているわけではない。帯域も大手数社で大半を占めている状況なので、実際にその大手が封鎖に応じたら残る帯域では十分にサービスが提供できず、事実上封鎖は成功するものと思われる。
国の内部での通信を止めたい場合はIXへの閉鎖命令となるだろう。ただしこれはISP同士の直接通信が残るので、大半を止めるまでには至らないと思われる。
国内での通信閉鎖という意味では携帯電話が無視できない。こちらはもっと簡単で主要事業者の3社とほか2社程度に規制を命令するだけで可能。しかし完全に停波させると影響が大きいので、実際にはウェブやメールの通信内容に対する規制に留めるのではないか。

WikiStart - Open-Mesh - Open Mesh

今回の通信規制に反応してメッシュネットワークへの注目も集っているらしい。Linuxでは先頃のリリースでOpenMeshの実装を統合したばかりだし、今後実用になっていくのかもしれない。

http://wiki.freebsd.org/WifiMesh

FreeBSDでは802.11sの実装が実験されている。
メッシュネットワークも面白いのだけど、日本のような地理的条件では最終的に海を超える方法を考えておかないといけないのではないかとも思う。