Akamai勉強会に行ってきた

Akamaiって何ぞや

という人も居るかもしれないので、前おき。AkamaiとはCDN(Contents Delivery Network)の市場において、寡占に近い市場占有率がある非常に有力なプレーヤ。

では、CDNとは何ぞや

今やCDNという語自体がAkamaiを指す語に近いのだけど、ようするにコンテンツをインターネットに配布することに特化したサービス。

Akamaiはどのぐらい凄いのか

勉強会の中での説明では、世界中のHTTPトラフィックのおよそ1割を常時処理している規模。CDN業界の中ではシェアが7割。残りの競合は3割を奪い合っている状況なので、Akamaiだけが桁違いというのがわかると思う。

ではどんな所で使われているか

世界中のHTTPの1割を処理しているというわりには、GoogleYahoo!と違って一般の人からの認知度も低いし、自分は使ったことが無いという人も多いのではないだろうか。実際には、一般的なサイトと違って直接使うものではなく、人気サイトにアクセスしていたら中でAkamaiを使っていたというケースが多いだろう。

  • Windows Update
  • Wiiのインターネット配信
  • PlaySation3のインターネット配信
  • 大手ポータル上位7社

などなど、一般的なインターネットユーザなら一日に何度もAkamaiのサービスを使っているといってもいいぐらい。

で、Akamaiのキモって何?

この辺が今回の勉強会で認識を新たにしたのだが、今までは「サーバを大量に並べてとにかく凄い勢いで吐く会社」というイメージ。サーバは各所に配置しているけど、ネットワーク屋というよりはサーバ屋に近い人種だと思っていた。
しかし、今回の勉強会を聞いた後のイメージでは「世界中の拠点に置いたサーバ間をオーバーレイネットワークで繋いでいる会社」になった。技術的にキモなのは、サーバの台数よりもその配置と広域連携の仕組みを作り込んだことにあるようだ。
何せ世界中の1割を処理する会社にもかかわらず、サーバの台数はたったの4万台しかないとのことだ。GoogleAmazonからすると恐らく2桁ぐらいは小さい規模なのではないだろうか。
台数によって得られるコンピューティングパワーよりは、世界中のISPにコロケーションした間をオーバレイネットワークによって繋ぎ、その状態を正確に把握することが他の会社にはなし得ないユニークなところだと思った。オーバーレイネットワークの状態は20秒に一度再計算されているので、これは文字通り世界中で一番正確にインターネットの現状を表わしていると言えるだろう。グローバルに展開しているISPももちろん自社の網内の情報は正確に把握しているが、お互いに交換することはないのでこれほどの精度で情報を集めている企業は他にないだろう。一部研究期間が観測用のノードをバラ撒いているプロジェクトがあったと思うが、民間企業が本気でやった規模にはとても敵わない。

GoogleAmazonより強いのか?

というのは呑みの席でも言っていたが、インターネットでサービスをするのに必要なリソースというのは3種類あると思う。

  • 演算能力
  • ストレージ
  • ネットワーク

Googleなどが多数のサーバを束ねて膨大な計算能力を手にしているのは言うまでもないことだけど、Akamaiはネットワークの分野で他のプレーヤの追従を許さないのではないだろうか。
各社の技術やサービスを比較すると以下のような感じ

name Google Amazon Akamai
Computing MapReduce,AppEngine Amazon EC2 Edge Computing
Storage GFS,bigtable Amazon S3 Net Storage
Netowrk ??? ??? Edge Suite

正直言って、AkamaiはNetwork以外では他社と比較してそれほど目新しいものではないが、得意なネットワークでは他の追従を許さないほど強い。Amazon.comのサイトを見ていればわかるが、彼らはAkamaiの顧客なぐらいなのだ。Googleもネットワーク分野での取り組みは、案外(私からすると)保守的に見える。
AkamaiはもっとComputingやStorageの分野に進むのかと思っていたが、比較的そちらは大人しい印象だった。そちらには進出しないのですかという質問もしてみたが、よくよく考えれば自分の強みを捨ててまで打ってでるのは愚策かもしれないなと思い直した次第

暗黒面など

勉強会ではあまり語らなかったけど、Akamaiにも暗黒面が無いわけではないと思っている。
最たるものはその高すぎる市場占有度だ。もはや社会インフラに近い存在にも関わらず競合よりも大きくなりすぎた存在はコケたときに影響が大きすぎる。Googleが数分異常動作したときには、サイトへの流入が激減したという話を聞いたがAkamaiが落ちるとそれどころの騒ぎではない。
Googleあたりの現金を持っている会社が買うかもしれないと思っていたが、その競合が顧客だったりするので独禁法もあって普通には買えないのではないだろうか。
現在のシェアはおよそ7割だという話が出ていたが、これもSpeederaという競合を買収した結果だし。これ以上のシェア拡大は多方面にいらぬ物議を呼びそうな気がする。
まあ、商習慣などの点でそれほど酷いことをしたという話を聞かないのはいいのだけど。これ以上は大きいだけで警戒される領域になるのではないかな

まとめ

  • Akamaiは世界の1割を牛耳る秘密結社
  • Akamaiは思っていたよりずっとネットワーク屋さん
  • 説明してくれた国谷さんがノリノリ
  • SFCの人達は爽やかすぎる

たのしい勉強会の企画ありがとうございました。勉強会の本編に比してだいぶ温めでお送り致しました:-)